Tatsuhiko Takahashi 2006

2006年 ツアープレーヤーNO.1
髙橋竜彦

14番で長いバーディパットをねじこんだ。15番で、同じ組の中嶋常幸がボギーを打って差は4つ。そのとき、胸に一気に沸いて出たのは「勝ちたい、というよりも“勝たなければ”という思い」。ますますプレッシャーは高まった。応援してくれるギャラリーは、「ほとんど髙橋の勝ち」と思うだろう。その期待を裏切るわけにはいかない。朝、スタート前のロッカールームでも、「ヤバイくらい緊張していた。果たして、これで球が打てるのかというくらいに」。ツアープレーヤー№1を決める今大会は、なんとしても欲しいタイトル。「勝ちたい」と思うほどに高鳴る鼓動。

しかし、1番ティでリーダーとしてコールされた瞬間、ふと我に返った。「俺は、これを味わうためにやっている」。痺れるほどの思いをしながら、ゴルフができる。「俺って、幸せだ」。プロとして、それ以上のことはない。だから、優勝争いの重圧からは、あえて逃げなかった。全身で受け止めながら戦った。2番パー4で、前方を木に阻まれた。「スタイミーになった第2打を、カット目に打ってぴったりとつけた」。このバーディに、勢いづいた。常に、自分の順位を確認しながらのプレー。「状況は、すべて把握した上で戦いたい」。それが、いつもの髙橋のやり方。11番で、平塚が首位に並んだが「逃げたら負けだ」。強い気持ちは消えなかった。

その週、好調のショットが支えだった。この日最終日は特に、フェアウェーを外したのは12番ホールだけという完璧な出来。最後のティショットがフェアウェーを捉えたとき、ウィニングパットを待たずに中嶋が、「優勝おめでとう」と言ってくれた。

“あこがれの人”との直接対決を制した。
しかも、「ラッキーだけでは勝てない」この難コースで。

ずっと「日本のメジャーで勝つこと」が夢だった。優勝賞金3000万円には、5年間のシード権と8月のWGCブリヂストン招待の出場権までもがついてくる。「今日は、僕のゴルフ人生最大の出来事」。大舞台で頂点に立った。その感動と誇りが全身から滲み出ていた。

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